斯くも詮なき日常に

イギリスに移住した30歳男のブログ

最近の音楽、感性の鈍化

 若い頃に観た映画を観て、若い頃に読んだ小説を読み返し、若い頃に聞いた音楽を何度も聞き返している。30歳を迎えた今、私の感性は確実に鈍化しつつある。全く流行についていけないのだ。そもそもイギリスに暮らしているのだから、日本の流行がわからないのは仕方がないと言えばそうなのだが、この傾向は日本を発つ数年前から、特に音楽について顕著に現れていた。そもそも今イギリスで何が流行っているのかもわからない。

 あいみょんやら、米津玄師やら、ドルチェ&ガッパーナやら、何一つとて聴いていない。ドルチェアンドガッパーナと言えば、チャラい男達が腰パンを求めるあまり、後ろからのアングルにおいてパンツの40%以上が露出した上で、そのゴムのところにでっかく「ドルチェ&ガッバーナ」と書かれているあれではないかと思ったが、よく考えたらそれはカルバンクラインだった。

 もちろん、どれも聞いてみればいい曲なのだろう。流行っているものにはそれなりに理由があるものだ。では聞いてみればいいではないか。この高度に発達した情報社会において音楽との出会いは10年前と比べて遥かに簡単になっているはずだ。もはやレンタルショップに足を運ぶ必要はない。YouTubeでも、各種音楽配信サービスでも、検索枠にドルチェ&ガッバーナと入力するだけだ。こんな駄文を書き散らす暇があるのなら、今すぐ聴いてみるべきだ。いざゆかん、新しい音楽が私を待っている。

 しかしだ。しかしなのだ。この腰の重さはどうだろう。自分が好きかどうかもわからない新しい音楽を聴くくらいなら、すでに自分が好きだと判っている音楽を聞いてしまうのだ。現に今、私はBUMP OF CHICKENの睡眠時間を聞いている。今この瞬間、流行の音楽についてのブログを書いているのにも関わらず、聞いているのは10年以上前、実に私が中学生だった頃の曲、しかもB面だ。

 中学から高校までのあの貪欲な開拓精神は一体どこへ行ったしまったというのだろう。今まさに消えさらんとする若さの残滓に未練がましくすがっているとでもいうのだろうか。いつまでも古くてダサい曲を聞いているおじさまたちを馬鹿にしていたが、今まさに私がそんなおじさまたちの仲間入りを果たしているではないか。なんでこの人たちの好きな曲って全体的に変なリバーブがかかり続けているんだろう、と内心すごく小馬鹿にしていた。

 というわけで聞いてみた。ドルチェ&ガッバーナを。正確には香水という曲らしい。しかも驚いた事に男性ボーカルだ。なんとなく女性が歌っているものだと思っていた。おそらくはあいみょんと混ざっていたのだろう。曲の感想については割愛させていただくが、かくして感性の鈍化を少しは遅らせる事ができたのではないだろうか。