斯くも詮なき日常に

イギリスに移住した30歳男のブログ

散髪

元より不精な性格の為、散髪が苦手である。

願わくば髪など切らずに置いておきたいが、世間は男の長髪を許容していない。

髪の毛を切った直後はマイティフォームからグローイングフォームに弱体化したかの様な見た目になるのも、散髪が好きではない理由の一つだ。

 

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マイティフォーム

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グローイングフォーム

 

以前は理容師の友人がおり、気兼ねなく髪型の注文が行えた。そうであれば散髪も億劫ではないのだが、こちらで新たに散髪屋を探さねばならぬ。

犬の散歩仲間である近所の婦人に、この村にある二つの散髪屋を教えてもらった。

その内の一つは事前の予約が必要ないとの事らしく、そちらに決めた。

当日に、急にめんどくさくなった時のためである。

 

そして今日、およそ三日間の引き伸ばしの後、ようやく件の散髪屋に行って来たのだ。

片田舎のため、勝手に老店主を想像していたが、扉をあけ出て来たのは、なんともハイカラな雰囲気を漂わせた痩身の中年だった。

座席は一つのみと、こじんまりとしいたが、店内は清潔感がありひとまず安心し、Hollyの助力を借りながら、過去の自分の写真を見せ、こんな感じにしてくれと頼んだ。

20分程度で散髪が終わり、仕上がりもそう悪いものではない。価格は15ポンド、およそ2000円程度だった。

悪くなかった。むしろ良かった。しかし、やはり、少し、散髪はめんどくさいのだ。

小銭について

英国人はあまり現金を持ち歩かないという。

基本的には何でもカード決済だ。

しかし私は未だ無職の身であり、住所の根拠も定まっていない為、カードの審査に合格出来ない。

故に当然買い物も現金で行なっているのだが、一つ問題がある。

頻繁に小銭を使えないのだ。

日本にいた頃は財布に小銭が溜まるのを嫌い、できる限り最小お釣り枚数を目指して会計をお願いして来た。

例えば、1622円に2122円を出し、500円玉一枚のお釣りを貰う、と言った具合だ。

仮に22円が無かったとしたら、2200円を出して578円を貰う。100円玉を500円玉にまとめたいのだ。

しかしながら、私がその様なお金の出し方をする度、Hollyは怪訝な目線をくれながら、「イギリスに行ったら、その変なお金の出し方はやめてね」と口を酸っぱくして言うのだった。その様な硬貨の渡し方をしても、十中八九店員に理解されないだろうとの事だった。

そしてイギリスへやって来た。郷に入れば郷に従え、である。

渋々最小お釣り枚数を諦め、紙幣一枚を店員に渡し、その度に膨らみ続ける小銭入れを寂しく懐にしまうのだった。

また買い物自体の回数が少ない為、必然的に一度に買い込む量も多くなり、小銭だけで済ませられる会計が少ない。

さらにイギリスの硬貨は日本のソレに比べて大きく、そして厚い。

硬貨がかさばるにも関わらず、手持ちの硬貨を減らすシステムが存在しないのだ。

Hollyにこの英国経済の不備を伝えたところ、英国民は現金を使わないからその様な問題は存在しないと一蹴された。

そうして今日も、はちきれそうな小銭入れを眺めながら、その使い道に思案を巡らせるのである。

嫉妬に狂う犬

「私は、犬については自信がある。いつの日か、必ず食いつかれるであろうという自信である。」ー太宰治『畜犬談』よりー

 

私が現在お世話になっているスミス家には犬が一匹いる。名をマギーという。毛深いボーダーテリアである。とても人懐っこい性格で、出会う人間のほとんどを、彼女は友人として暖かく迎えてくれる。

元来猫派の私であったが、すっかり彼女に魅了され今や犬派の一員である。

畜生風情が愛玩動物の域を出ることはないと考えていたが、とんでもない。犬は家族だ。

毎朝の散歩も日課と化し、義母や近所の奥方との会話も英語を学ぶ上での良い刺激となっている。マギーは他の犬とも概ね仲が良い。無論、中には折り合いの付かない相手もおり、特に近所に住む他のボーダーテリアとは犬猿の仲である。両者とも、犬ではあるが。出会おうものなら殺し合いを始めかねない勢いで吠え散らし、力の限りで手綱を握る羽目になる。

 

今朝も散歩を終え、居間にて寛いでいると、義母に「今からもう一度、犬の散歩に行きたくはないかしら?」と尋ねられた。

なんでも、散歩仲間の一人の家族が入院したために見舞いに行かなくてはならなくなったそうだ。しかし彼の犬はとても活発であり、退屈しすぎると家の中で何をしでかすか分からないという。そこで散歩仲間である義母に連絡し、散歩の代行としばしの預かりを頼んだという訳だ。

素晴らしい相互扶助システムだと思い、二つ返事で了承の旨を伝えた。

二度目の散歩という喜ばしいアクシデントに、千切れんばかりに尻尾を振るマギーを連れ、早速件の散歩仲間の家へとやって来た。

庭の置物の下に隠された合鍵を手に取り、扉を開けるやいなや、マギーの体躯の二倍はあろうかという、白黒のコリーが飛び出して来た。両眼で色の違うオッドアイだ。彼女の名はシルヴィーという。

いざ遊ばんと、飛び跳ね、抱きつき、玩具のボールを差し出して来た。さぁ投げろ、然るのち、追いかけんとでも言いたげだ。なるほどやんちゃな犬である。

犬派に改宗したばかりの私としては、その勢いに半歩下がる思いだ。

ボールから引き剥がし、リードを付け、あさっての方向へ走ろうとするシルヴィーをぐいと引っ張り、散歩へと繰り出した。

朝と同じ道筋では退屈であるとし、朝とは反対方向の道を行った。

なだらかな坂道を辿り、木々に囲まれた道を抜けると、360度素晴らしい景観を望むことができる、私のお気に入りの散歩道だ。イギリスは山が少なく、たいていは丘に囲まれており、空を広く感じる。

街の喧騒とも切り離され、風の音のみが聞こえるばかりだ。こちらに来てから、風の音とは耳元に聞こえる物ではなく、遥か遠方にこだまする、巨大な息遣いの様なものだと知った。

シルヴィーは道中松ぼっくりをを見つけては、鼻先を器用に使い我々の足元に転がし、私がそれを蹴れば飛びつき咥えてまた足元に転がすという遊びを繰り返した。賢く愉快な犬である。

1時間ほどの道程の後、しばらくシルヴィーを預かるとのことで、スミス家へと招き入れた。慣れない環境に興奮しているであろう、シルヴィーはここでもやはり飛び跳ね抱きつき、我々が隙を見せると顔を舐めに来た。

これはいかんと、庭へ連れ出し遊ぶ事にした。シルヴィーに渡すため、マギーが普段使っていない玩具を探す。紫色の硬いゴムの材質で出来たヘンテコな鳥のおもちゃを見つけた。お腹を押すと、くぇーと妙ちくりんな鳴き声をあげる。君に決めたと、シルヴィーへ放り投げた途端、横からマギーが猛然と飛びかかり、玩具をかっさらって行ってしまった。

喜んだシルヴィーがそれを追いかけ、庭中を二匹でワンワンと吠えながらめちゃくちゃに走った。

そのあと一時間と少し、シルヴィーが帰るまで、マギーはその紫色の変なおもちゃを手放すことはなかった。我々がシルヴィーに別のおもちゃを投げると、吠え散らし、シルヴィーを撫でても吠え散らし、マギーと名を呼んでも吠え散らかした。ずっと鳥の玩具を咥えたまま!彼女にもこれほどの激情が宿っていようとは!

シルヴィーが帰るとようやく落ち着き、後は糸の切れた人形の様に眠りに落ちた。普段なら食事はまだかと催促する時間になっても彼女は眠り続けたままだ。

Hollyは彼女をおもてなし能力の無い犬だと評し、しかし我々はそんな彼女を愛してやまないのである。

真っ赤なお鼻のトナカイの名はルドルフ

町中のそこかしこから、クリスマスソングの聞こえる季節となった。

よく耳にする曲というのは、無意識のうちに口ずさんでしまうものだ。

先日「赤鼻のトナカイ」を日本語で歌っていると、Hollyに歌詞中の情報量が少なすぎる事を指摘された。

そこで今回、日本語歌詞と英語歌詞、英語歌詞翻訳を並べて比較してみたいと思う。

余談ではあるが、「トナカイ」とは元々アイヌ語である。

 

真っ赤なお鼻のトナカイさんは

いつもみんなの笑いもの

でもその年のクリスマスの日サンタのおじさんは言いました

Rudolph the red-nosed reindeer

Had a very shiny nose

And if you ever saw it

You would even say it glows

All of the other reindeer

Used to laugh and call him names

They never let poor Rudolph

Play in any reindeer games

赤い鼻のトナカイルドルフは激しく輝く鼻を持っていた

もしあなたがそれを見たら、思わず「光っている!」と言ってしまうだろう

他の仲間のトナカイ達はそれを笑い馬鹿にし

かわいそうなルドルフを仲間に入れて遊ぶ事はしなかった

 

暗い夜道はピカピカの

お前の鼻が役に立つのさ

Then one foggy Christmas Eve

Santa came to say

Rudolph with your nose so bright

Won't you guide my sleigh tonight?

その後、ある霧の深いクリスマスイブ

サンタがやって来てこう言った

「眩しい鼻を持つルドルフよ、

今夜私のソリを案内してくれないか?」

 

いつも泣いてたトナカイさんは

今宵こそはと喜びました

Then all the reindeer loved him

And they shouted out with glee

"Rudolph the red-nosed reindeer

You'll go down in history!

その後、すべてのトナカイは彼を愛し、

彼らは歓喜と共に叫んだ

「赤い鼻のトナカイルドルフ

あなたは歴史にも名を残すだろう!」

 

 

 

 

仲間のトナカイの掌返しがすごい!!

さておき、日本語版の情報量が少な過ぎると言うよりは、よくぞここまで情報を抽出できたものだと、感銘を受けた。細やかなディティールはないにしても、ストーリが成立している。

情報として失われている点を挙げると、

・トナカイの名前はルドルフ

・大勢いるトナカイの内の一匹

・ピカピカの鼻というか、鼻自体が赤く発光している

・その年のクリスマスの日は霧の深い日だった為、光源が必要だった

・仲間のトナカイがクズ

この辺りだろうか。

 

海外から輸入されて歌詞のある童謡はほとんど例外なくこの現象が発生してる。

 英語と日本語を比べると、スピーキングの面においては圧倒的に英語が有利だからだ。

時間あたりに伝えられる情報量を比較した場合、日本語は英語のおよそ70%の量しか伝えられない。

 言語の持つ音節の構造上仕方のない事ではあるが、日本人が英語を難しく感じる理由の一つが、そもそも会話のスピードが段違いである事が一因であると言う。

しかし、ライティングの比較で言えば、日本語は英語に対し圧倒的優位性を持っている。100文字あたりの情報量はおよそ2倍だ。

試しにAメロの英語歌詞の文字数と英語歌詞翻訳の文字数を数えて見たところ、英語歌詞174字に対し翻訳101字であった。

今回はかなり直訳気味に訳している為、情報量を損なわずにさらに圧縮する余地も十分にある事を考えると、妥当な数字だろう。

漢字のもたらす恩恵である。

そう考えると、中国語が攻守共に隙のない言語の気がするが、この検証はまた後日する事とする。

改めて、移住しました

以前に挙げた「移住しました」というタイトルの記事が、全く移住しきっていない事に気が付き、改めて移住した経緯を記す。元の記事はタイトルを変更する。

 

イギリス人のHollyと出会い1年の交際の後、5年間勤めた会社を辞めてイギリスへの移住を決意。年間休日50日のややブラック気味な会社だった為、正直移住の話が出た際には諸手を挙げて飛びついた。すでに陳腐化されつつある台詞だが、日本の労働環境は異常だ。

当初は結婚ビザでの移住を考えていたが、ある程度の貯金額を一定期間以上保持していなければならず、審査が難しそうである為断念。

一か八か、2017後期YMS(ワーキングホリデーのようなもの)の抽選に応募したところ、運よく当選。問題を先送りにした感が無いでもないが、とりあえず渡英を実現した次第である。

現在はHollyの実家に居候として身を置き、英会話教室に通いつつ、仕事を探している。

無職である。

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当面の計画として、1月にロンドン付近の街へ引っ越しをする予定である。

中央に近ければ近いほど、選択肢も広がるというものだ。

好きな邦楽、洋楽

無性に人に音楽を薦めたくなる時がる。今がそうだ。

前置きは以上。以下は私の推薦である。

 

①志摩参兄弟

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和物である。三味線を前面にプッシュしたバンドであるかと思いきや、サックスやフルート、ターンテーブルなどジャンルにとらわれないミクスチャーロックバンド。

 

②suzumoku

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suzumoku。きな臭い歌詞の曲が多いが、だからこそ稀に歌われる「希望を信じる姿勢」に説得力がある。『真面目な人』はすべての社畜のバイブル。

 

岡崎体育

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あまりにもメジャーなので迷ったが、平成の生んだ大怪物、岡崎体育も挙げておく。

『MUSIC VIDEO』『感情のピクセル』で悪名高いアーティストであるが、その才能はシリアストーンの楽曲でも存分に発揮されている。

 

エド・シーラン

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Hollyのお勧めで好きになった。どことなくケルティッシュな感じが良い。歌詞がろまんちっく。

 

⑤Meja

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『How crazy are you?』が有名な人。一つ目の「ドゥンドゥンドゥルドゥンドゥン」が大好き。タイトルが直訳で『金がすべて』というのもポイント。2つ目はPVがエロいので載せた。小中学生なら精通してもおかしくはないレベル。余談であるが、私の性への目覚めはMEGUMIである。

 

おぉ、ジーザス!

先週の金曜日、英会話教室にてさらに進んだ英語を教えてくれる教室があると聞きき、今日再びLambournへと行ってきた。

二時からの授業と聞いていたが、実際には一時から三時までの授業だったらしく、今日は申込書の作成と簡単なテストだけを受けて終わった。

申込書を渡されるも、記入例をそのままコピーすればよいと言われるも、達筆なる筆記体で書かれていたために、苦戦を強いられた。渡英する前は、英語圏の人間は筆記体を使わない、などという話を聞いた事があったが、大嘘である。こちらでは頻繁に目にする。

Lambournは競走馬を育ている土地であり、外国からやってきた騎手の奥様方にに英語を教える必要があるため、このような教室が開かれているそうだ。私の他にインド、イタリア、フランス、中国からの生徒が参加していた。

本格的な参加は次回からとし、帰りに図書館へ立ち寄った。

今朝、義母と犬の散歩中、クリスマスについてあれやこれやと話をしていたが、本を読むのが一番分かりやすいという事で、連れてきて貰ったのだ。

そもそも子供の頃から慣れ親しんでいるはずのクリスマスだが、正直キリストとかいう偉い人の誕生日であるという事しか知らない。

クリスチャン系の幼稚園に通っていたため、クリスマスの劇で羊飼いの役をやった事があるが、物語においてどのような役割を果たしたのかも、そもそも当時から理解していなかった。

そこで今回この本を借りた。

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「クリスマスの話」これほど分かりやすいタイトルがあるだろうか。

子供用の本であるため、難しい単語もなく、自力でもなんとか読めるレベルだ。

簡単にあらすじを記す。ネタバレ注意である。

 

 

マリアの前に天使ガブリエルが現れ、いくつかのお告げをした後、マリアは処女懐胎を果たす。マリアと旦那は大喜び。

人口調査のために全国民がベツレヘムに集められる。

身重のマリアと旦那もベツレヘムへ行くが、宿屋がいっぱいで馬小屋しか借りられない。

時を同じくして、東の遠方に住む3人の賢者が空に輝く星を目撃、すべての人間の頂点に君臨する赤ん坊が生まれるお告げとして、星を追いかけ旅立つことに。

同じ頃、高地に住む羊飼いたちの頭上では天使が出現。神の子の誕生を知らせ、ベツレヘムへ向かうよう指示を出す。

ベツレヘムの馬小屋にて、ジーザスが誕生する。干し草でベッドを作る。

羊飼いが到着し、ジーザスの前に跪く。贈り物として、子羊を差し出す。

その後三人の賢者も到着、贈り物として金と、フランキンセンス(スパイス)、マー(スパイス)を渡す。

馬小屋の動物達もジーザスの前にひれ伏す。

小屋の外では天使が神に対する感謝とジーザスへの歓迎の意味を込め、祝福のラッパを吹き鳴らした。

 

自らの浅学を晒すようではあるが、読み進めているうちにSUN値を大きく削がれた気がする。なんというか、この話は名状しがたい。

東の賢者と羊飼いがの贈り物が、クリスマスプレゼントの由来となるらしい。

誕生したジーザスが後に石をパンに変えたり、水をワインに変えたり、磔にされて死んだ後復活したりと波乱万丈な人生を送る。さしずめ、このクリスマス話は「ジーザス オリジン」と言ったところだろうか。是非とも劇場版三部作でまとめて欲しいところだ。

正直な話、八百万の神が仲良く暮らす大和の国に育った私には、唯一神と言った絶対の存在とは理解しがたい話である。

紀元前、とある王国の王子がこの世のあらゆる苦しみは欲望から生まれると考え、壮絶な苦行に耐えすべての欲望に打ち勝ち、涅槃の末に仏陀となった。というのが釈迦の教えた仏教の成り立ちであるが、こちらは非常に理解しやすい。

おそらくこのクリスマスの話には、必然性と教訓が含まれていない為であろうと考える。

何故羊飼いなのか、東の三賢者とはだれか、そもそもこの宗教における「神」とは何なのだろうか。軽く調べてみたものの、宗派によって諸説あるらしく、一筋縄ではいかなさそうだ。

いつかキリシタンの方にこの辺りの話を聞いてみたいものだ。