極度乾燥(しなさい)
先日のオックスフォードで発見したSuperDry極度乾燥(しなさい)®︎であるが、あれから非常に興味を引かれ、色々と調べた。
まず、これが公式のホームページだ。
一目見ただけで、単にネタに走っているわけではないと分かる商品の数々だ。
Hollyに言わせると、かなりチャブスじみているらしいが。
ここで気になったデザインをいくつか紹介しよう。
英語デザインのTシャツは日本でも馴染み深いが、そこに日本語が加わる事によって強烈な違和感を感じさせる一枚。
絶妙に意味のない日本語が、来日した英語圏の人々の気持ちをリアルに体験させてくれる。
REAL OSAKA 6 会員証な
なぜに会員証なのか。
やはりデザイン性には優れている。
TOKYO Super Dry 自動車潤滑
何を自動翻訳機にかけたのか、とても気になる。
もちろん、メンズだけでなくレディースの商品も取り扱っている。
No.1衣類
これは何となく理解できる。衣類に衣類と記しているのは、何ともハイカラな感じがする。
会員証なにも通ずるが、主張しすぎない日本語が奥ゆかしくて良い。
私の一押しデザイン。北の西による北。
結局北なのか西なのか、北西なのか。
レディースだが、サイズさえ合えばこれを着て街を練り歩きたいものだ。
ここまでいくつか紹介したが、実は日本語があしらわれたデザインの商品はそう数が多くなかった。
以前はよりたくさんの日本語ワンポイトがあったが、事業が拡大するにつれ奇をてらったデザインは減少傾向にある様でとても残念だ。
しかしこの違和感のある日本語はブレードランナーやニンジャスレイヤーに通ずる近未来感を醸し出している様にも感じる。
いずれ日本にも進出していただきたいものだ。
偶然見つけた極度乾燥(しなさい)だが、これについて考える内様々な気づきを得た。
異国の文字に対してデザイン性を感じるのは各国共通だ。
我々日本人がアルファベットや横文字に格好よさ感じる様に、欧米諸国の人間は漢字をアジア風の神秘的な絵に近い物として感じるらしい。
漢字が元々象形文字だった事を考えると、絵の様というのは実に的を得ている。種類の多さも魅力の一つだそうだ。
しかし、単なるデザインとしてあしらわれたはず他国の言語だが、その言語を母国語とする人間の目に触れた瞬間、即座に込められていた意味が解凍され、その下品さ、意味の通じなさ、あるいは稚拙な文法に可笑しみを感じるのだろう。
おそらく、「即座に理解される」という部分が重要だ。
例えば「今すぐに私の尻の穴を犯してください」と英語で書かれたTシャツがあるとする。
私がその英文の意味を理解したとしても、そのデザインに対する評価は意味を理解する前とさほども変わらないだろう。
その言語を母国語としない者からすれば、意味とデザインに関連性はないのだ。
しかし、極度乾燥(しなさい)のTシャツには違和感を覚え、デザインとしては機能は果たされていない様にも思える。デザインよりも意味の方に意識が引っ張られる為だろう。
(デザインとして機能していない事それ自体が、デザインにもなり得る。私は極度乾燥の日本語デザインが好きだ)
極度乾燥(しなさい)のTシャツを着たり、奇天烈な意味の漢字のタトゥーを彫ってしまった外国人を笑うのは、日本人にとっては至極普通の反応かもしれない。
しかし同時に我々は、妙な英語に囲まれ、それをデザインとして良しとする、我々自身を笑っているのではないだろうか。
私が日本にいた頃住んでいた街に「Pearl Necklace」という宝石店があった。「胸に掛かった精液」の意味がある。主婦層向けの洋服屋「Deep 〜reach the climax〜」は「イクまで深く」という意味になる。ホームセンターダイキは一昔前までディック(男性器)という名前であった。
LとR、SとThの区別もつかず、文法も滅茶苦茶なままに歌われる、国内ミュージシャンの英語歌詞。
コンプライアンス、コミット、アライアンスなど、ビジネス英語を羅列し、今後の方針を説く老舗会社の役員。
かくいう私も、この記事の中で何度日本語化された英語を使っている事か。
敗戦後、GHQによって強力にアメリカナイズされた経緯があるとはいえ、果たして文化とはと、考えずにはいられない。
日本国内ではほとんど問題になる事にない、「文化の盗用」についても、いずれ書こうと思う。