斯くも詮なき日常に

イギリスに移住した30歳男のブログ

Swindonへ

イギリスにやってきてからあっという間の一週間が過ぎた。

こちらに来てから毎朝1時間半程度の犬の散歩をしている為か、体調もすこぶる良い。

Hollyはめんどくさがって散歩に来ない為、だいたいは義母とご近所の方々に随行させていただいている。

そんな今日もボーダーテリアのふわふわとした尻を眺めながら、ぬかるみを踏みに足を取られていると、不意に義母がご近所さん達に向かってこんな事を言った。

「そうそう、今日はSwindonに行くのよ」

コリーとウィペットの飼い主達はそれぞれ顔を見合わせるなり、両手を上げて「Oh no!」と大笑いした。リアクションが英国人である。

帰りがけにあったゴールデンレトリバーの飼い主も、お隣に住む自動車の修理工も判を押したかのように全く同じ反応を示した。いつか私もナチュラルにそんなリアクションを取りたいものだ。

 

Swindon。

かねてより聞いた話をまとめると、そこには「チャブス」と呼ばれる類の人間が多数生息しており、彼らは定職に付かずドラッグの売買や違法な売春を生業とし、暴力と犯罪を盾に街を牛耳っているのだそうな。

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名もなき修羅が出て来た時、これだけの強さで雑魚扱いなのかと次元の違いを見せつけられたが、以降の修羅は普通にモヒカンレベルだった事にがっかりしたのはいい思い出。あの時ファルコに倒されていなかったら、きっとあいつは出世をしただろうに。

 

私は今回YMSというビザを以って渡英を果たした訳だが、最終的な手続きの完了として入国から10日以内に最寄りのPost Offeceへ出頭してバイオメトリクス在留許可証を受け取らなければならない。

その最寄りのPost Offeceこそが件のSwindon市内にあるのだ。

避けては通れぬ試練である。

車に揺られて30分、ほどなくして修羅の国へとたどり着いた。

いかにも治安の悪そうな薄暗い立体駐車場へ入り上階を目指し進んで行くと、早速一方通行であるはずのスロープへスピードを保ったまま侵入してくる一台の車と衝突しそうになった。なるほど手痛い洗礼である。

好々爺然とした初老の運転手は、にこやかに手を挙げバックして行った。

車を停め、Post Officeを目指して街を歩いていると義母が私に「あれがチャブスよ」と耳打ちをした。

見やると痩身の若者数名が黒ずくめの格好で、タバコなのか如何わしい草なのか、とにかく多量の煙を吐き出しながら道の端にたむろしていた。

肌は青白いが眼光は鋭く、一目で危険と分かる風体だ。

なるほど今までの平和な日本とは身近に存在する危険のレヴェルが違うのだと襟元を正し、背負っていたリュックサックをお腹に抱え、その上からダウンコートを着る事で完全防備の姿勢を見せた。

そうした警戒が功を奏し、無事にPost Officeへ到着し、Hollyのガイドのおかげで目的のものをすんなり取得できた。

その後にHollyとしばし別行動をとり、義母と共に明日に迫ったHollyの誕生日プレゼントを探しに行った。3軒隣のゲームショップへ入り、マリオカート8を購入。前回のvodafoneショップから気になっていたが、この国は恐ろしく客と店員が仲良く喋るし、誰がより面白い冗談を言えるか競い合ってるかの様にも見える。

さらに向かいの洋服店に入り、義母が部屋着様のガウンを探したが、どれも品質がチープなものばかりで目ぼしい商品に出会えなかった。

Hollyの待つ靴屋へ集合し、Hollyの欲しがる靴を義母がプレゼントとして購入。

各々の目的を終え帰路へつこうとした矢先、Hollyに模型屋を見たいのではないか?と聞かれた。

正直に言えばとても見たい。なんなら事前にGoogle mapsで調べていたくらいだ。

チャブスの蔓延る極悪街道を練り歩き、五体満足で模型屋まで辿り着けるのかという懸念があったが、Hollyや義母に言わせると「ぶっちゃけ昼間はそんなに危なくないんよ」との事であった。

まぁ薄々感じてはいたのだが。

かくして、歩いて10分の模型店へとやって来た。ガンプラはあるかと探してみるも、どうやら鉄道系を中心としたお店らしい。

模型屋の主人に尋ねると、かつてはこの店にも置いていたが、ある時から販売にライセンスが必要になり、それ以降ガンプラを売れなくなってしまったそうな。

なんと酷い話だろうか。利権についてはわからぬが、必ず、かの邪智暴虐のバンダイにクレームの一つもくれてやらねばと、メロスの如く激怒した。

人々に必要なガンプラが行き渡らない以上、法を犯してでも闇ガンプラブローカーとして夜のSwindonに生きる道もある。

しかしよく考えなくとも、今は21世紀でamazonがあるし、Hollyに聞いても「イギリスではそんなに需要ないよ」との事だった。

馬鹿な考えはよして、真っ当に生きる事にする。

 

かくして、2年間英国に居座るための手続きを全て完了した。

残るは言語の壁と仕事である。