LOST IN TIME
APPLE MUSICを絶賛活用中である。
サービス開始当初は洋楽ばかりであまり旨味を感じずに3ヶ月のお試し期間終了と共に退会したのだが、ここ最近は邦楽も含めラインナップが充実していると聞き及び、改めて再登録をした次第である。なるほど確かに以前とは比べ物にならない充実具合で岡崎体育の新譜も発売当日に聞けた。これはすごい。
中学高校時代に聞いていた懐かしい邦ロックの品揃えも申し分なく、ELLEGARDENに始まりメレンゲ、フジファブリック、the pillows、RADWIMPS(一部)etc…商業音楽に魂を売った有名どころのバンド以外はほぼ網羅していると言ってもいい。
そんな懐メロの中の一つがLOST IN TIMEである。
中学二年生当時、井上陽水からスピッツへ、スピッツからBUMP OF CHICKENへと流れ着き、TSUTAYAレンタルの販促ポップ「BUMPが好きならこれも好き」にて紹介されていたLOST IN TIME「冬空と君の手」
音楽の中にある疾走感という概念を覚えて日の浅い私にとって、このアルバムの最初の3曲「花」「翼」「線路の上」は心の琴線をトレモロビッキングでかき鳴らし、音楽の歌詞は常に前向きな意味合いでなければならないという自身の未熟な常識を完膚なきまでに叩き壊した。
以下少し引用
LOST IN TIME「花」
夢の続きをふと見たくなる
錆びついた手で傷口を塞ぐ
顔を上げれば泣き止んだ空
擦り切れた声 大粒の涙
笑ってたのはもう昨日の事
今の僕に明日は見えない
季節を変える風が
心を貫いても
もう二度とあの人同じ花は咲かない
良い。歌詞の基本をしっかりと抑えていますね。抑えすぎて今見てみると若干陳腐な感じすらするが、中二病真っ盛りの私にとってはバイブルの一説に等しかった。当時のこのバンドのテーマは人生に対する絶望、晴れることのない後悔、そんなところだったか。そんなこんなでしばらくはLOST IN TIMEにどっぷりとハマり、友達と行ったカラオケではしたり顔で歌い上げ嫌な顔をされたりもした。そうしてある日LOST IN TIMEの新譜「さぁ、旅を始めよう」が発売された。すぐさま入手した後ダッシュで帰宅、自室のCDプレーヤーにセット、ヘッドフォンを装着し、どんな後ろ暗い歌詞を聞かせてくれるのか期待に胸を膨らませ、再生ボタンを押した。
LOST IN TIME「旅立ち前夜」一番サビ
頑張れよ 負けるなよ
歯を食いしばって僕らは生きてる
振り向くな 前を向け
小さな命を僕ら燃やしてる
頭の中が「?」で埋め尽くされた私はリモコンの逆スキップで曲の頭から聞き直した。
アコギ一本の弾き語りなのがあまり好きじゃない。わざとらしいシャウト感が気になる。何より何だこの歌詞は。爆笑オンエアバトルの主題歌かよ。タオルズはいいユニットだった。「君に幸あれ」しか知らないけど。私はそっとヘッドホンを置いた。
~月日は流れ~
2017年正月、APPLE MUSICに加入した私は懐メロを聴き漁っていた。そんな折に見つけたLOST IN TIMEの文字。まだ活動していたのかと驚き、昔好きだった曲を一通り聴き終えた後、最近の曲も聞いてみることにした。
LOST IN TIME「30」
転がる石にはどうもなれなかった
憧れは遥か昔へ遠ざかった
それでも少しは世界が広がって
守るべきものが何となく解った
同じ道繰り返し自分の小ささを思い知って
それでも種を蒔いた
野に花は咲くんだよ
歩き続ける 30
6畳一間の万年床の上、私は裏声で「んなるほどねー!」と可愛く叫んでいた。
「もう二度とあの人同じ花は咲かない」から11年の時を経て「それでもタネを蒔いた野に花は咲くんだよ」へと歩みを進めたのだ。飾り付けられた絶望ではなく、人生を見つめ直した上での諦観、先行きへの不安、若さへの羨望、そんな生活の中でも見つけた希望と守るべきもの。同じくしてアラサーを迎えていた私にとっては、曲の最初から最後まで共感の連続だった。人生を肯定されたかのような気さえした。そうして現在LOST IN TIMEに再びどハマり中である。先月発売された新譜「すべてのおくりもの」も絶賛ヘビーローテーション中だ。やはり音楽は良い。