町内会のお祭り
オルドボーン町内会の主催するお祭りがあると聞いて、Hollyと義父母と行って来た。
メインの会場となる鍛冶屋の前に着くと、人だかりの中心で町の人々がクリスマスキャロルを歌っていた。それぞれの歌がキリストの誕生までの物語を歌っているという。
チャリティとしてホットワインやジンジャーブレッドなども置いており、お気持ち程度の小銭を渡せば、小腹を満たすとともに、ほろ酔い気分でお祭りを楽しめる。
初めてホットワインなるものを飲んだが、熱燗に似ていてとても美味しい。
どうでも良いが、どの露店も決まって店先が暗かった。
明かりは蝋燭やLEDの電飾のみである。
Hollyに聞くと白人はアジア人に比べて夜目が効くからではないかとの事であった。
鍛冶屋の裏側へ廻るとハンドベルの演奏をしていた。
紳士淑女の皆様はクリスマス柄のセーターで洒落込んでおり、私も今シーズン用に1着買おうと決めた。
サンタの帽子には電飾で「HO!HO!HO!」と刻まれている。
ハンドベルの演奏が終わると、今度は鍛冶屋の建物の中でバンドの演奏が始まった。
「皆さんすみません、こんな格好をしていますが、実は私たちはアメリカ人ではありません!」の掛け声と共に始まった曲はまさかの「カントリーロード」だった。ギリギリの人種いじりである。今までのクリスマスムードはどこへ行った。
しかし、楽しければそれでいいのだ。会場の人々は手拍子と共に大合唱を始めた。
英国人は一人で歌うのは恥ずかしいが、皆で歌うのは楽しくて仕方がないという。
あっという間に時は流れ、お開きの時間となった。
クリスマスソングは最後の一曲だけであった。
観客は三々五々に家路を辿り、露店は各々店じまいを始めた。
祭りの後の寂しさは、万国共通である。
それぞれの厳かな日
Hollyの家族と食事をしながらクリスマスの話をしていた時、日本ではクリスマスにKFCを食べる事がままある事を話した所、食卓が阿鼻叫喚の地獄絵図となった事がある。
なんでも、クリスマスにKFCを食べる英国人は、自殺を目前に控えた孤独な中年以外にありえないという。
英国のクリスマス家族や親戚が一堂に会し、食事を囲み、プレゼントを贈り合う。クリスマスの翌日はボクシングデーとして貰ったプレゼントで遊ぶのだそうだ。
ボクシングデーは日本ではあまり馴染みがないが、元々はクリスマスにも仕事をしなければならなかった、屋敷のバトラーや使用人などを家族と過ごさせる為に設けた祝日であり、この日は屋敷の主も身の回りの世話を自分でやらなければならなかったそうな。
これは確信を持って言える事だが、英国人にとってのクリスマスは日本人にとっての正月に相当している。
英国人にとっての1月1日はむしろパーティの日であり、家族とよりは友人と過ごす事を選び、どれだけのKFCを食べても何の問題もない。
逆に、日本人が正月にマクドナルドを食べて過ごすと聞くと、なんとも不届きな感じがするが、クリスマスに友人らとKFCを食べる事にはあまり抵抗を感じない。そもそも七面鳥が手に入らない。
ちなみに中国と韓国では一年で最も重要な日は旧正月に当たる春節であり、やはり多くの人は家族と過ごす。旧暦を使用しているため、毎年日付が異なる。
各国それぞれの厳かな日。
クリスマスツリーとフラミンゴ
クリスマスまで残り一週間ほどとなり、Hollyの家族みんなとクリスマスツリーを買いに行く事となった。
意外に思われるかもしれないが、今の今までクリスマスツリーを飾ってはいなかったのだ。
どこの家庭も本物のもみの木を使用する為、あまり長期間部屋に飾っておくと乾燥して燃えやすくなり、火災のリスクが高まるのが理由である。
代わりにクリスマスが終わってもすぐに片付ける事はなく、1月6日まで飾る。
まずはファーマーショップと呼ばれる、野菜や肉、チーズなどをオーガニックな雰囲気で売っている店へ来た。クリスマスで振舞う七面鳥を注文する為だ。
ここにもツリーが売っており、店外の敷地内に来年以降に売るためであろうモミの木も栽培されていた。
スコッチエッグを買って食べたが、近所のCo-opに置いてあるもののとは比べる事も憚られるほどに美味しかった。さすがはオーガニック。
そうしていよいよクリスマスツリーを買いにホームセンターへやって来た。
すごい。見渡す限りモミの木である。
価格は170センチくらいのもので3500円程度、大きなものになると8000円程度だ。
全てクリスマスツリー用として栽培されたものである。
190センチほどで、胴回りもすっきりした一本を選び、ネットに包んでもらった。
従業員の息子か弟かは分からないが、8歳くらいの男の子がテキパキと仕事を手伝っていた。伝票を書いたり、ネットを切って結んだり、大活躍だった。
包んでもらったツリーを車に詰め込み、家に帰って早速設置。
そして各種オーナメントの飾り付けを行う。
ツリーの頂上に座すのはスノーマン風の天使である。
ツリートップは星のイメージがあるが、これはベツレヘムの星を模したアメリカの飾り方らしい。
イギリスは福音を知らせる天使が一般的だ。
ツリーの上部中心にはなぜかフラミンゴの電飾が光っている。
楽しく、面白ければ良いそうだ。
フラミンゴの破廉恥な桃色に心をときめかせ、今日も夜は更けるのだった。
Can I eat English Sushi ?
Hollyにブログの存在が見つかり、記事のタイトルが魅力的でないとの指摘を受けた。
単語の羅列では味気なく、もっと人が読みたくなる様なタイトルをつけるべきであり、内容に関しても日記ではないのだから、もっと有益な内容にするべきだと。
そうだったのか。日記ではなかったのだ。
そこで今回は彼女の推奨するタイトルを付けた次第である。
なんでも、タイトルには疑問符をつけると、人はその結果が気になってリンクをクリックするという。
さすがは、某Face Bookで1000人以上の参加するコミュニティを統括しているだけの事はある。
さて、前回の記事でメガネを作りにMarlboroughへ行って来たのだが、帰りにスーパーへ立ち寄り、以前より気になっていた寿司バーにて、昼飯として寿司を買うことにした。
写真右下のパックを買って二人で食べる事に。価格は10ポンド。1500円くらいだ。
ちなみにイギリス人は朝と昼の食事には手間をかけない。
料理は夜だけで十分らしく、朝はシリアル、昼はトーストなどが多い。
なのでこの昼食は少々豪勢だ。
改めて見ると、全く美味しそうな写真ではない。
Food Wanker諸君が如何にして旨そうな写真を撮っているのか、是非一度ご教授願いたいものだ。
しかし料理は見た目も大事だが、肝心なのは味である。
日本と同じく海に囲まれた島国であるとはいえ、不毛の大地英国にて果たしてうまい寿司など作れるのだろうか。
当時の大英帝国が強大な戦力を持ちあれだけ多くの国を支配下に置けたのは、兵士が食事にこだわらなかったからという話さえ聞いたことがある。(余談だが、実際には近隣のヨーロッパ諸国に比べ、地政学的に有利であった為とされる。島国であるが故の防衛のしやすさから、戦力の多くを植民地獲得に回せたのだ)
恐る恐る口にしてみた。
醤油の味しかしない。
無理もない、醤油をじゃぶじゃぶ付けすぎたのだ。
二度目は適量を意識し、口に運ぶ。
うまい。
なんというか、普通にスーパーに売っている寿司の味だった。
マグロはマグロであり、サーモンはサーモンである。
日本にいた頃、足繁く通っていた100円回転寿司「かっぱ寿司」と比べても遜色のないクオリティだ。
久しぶりの和食テイストに持っていた箸が止まらなくなり、あっという間に平らげた。
ちなみに、一番うまかったのは写真左のカニカマとアボカドを巻き、マヨネーズとたっぷりの七味をかけた名前の分からない寿司だった。
英国の寿司も問題なく食べられた。万事よしである。
閃光と風圧のメガネ作り
メガネを作りにMarlboroughのメガネ屋にやって来た。
今使っているメガネの度も合わなくなって来たと感じていたので、ついでに視力検査もしてもらう事に。
愛想の良い、物腰柔らかな青年の店員が担当をしてくれた。
店員は皆クリスマス柄のセーターを着ており、季節感が満載だ。
最初に、日本のJINSと同じ様にスコープを覗き、ピントが合ったり合わなかったりする気球を見つめる検査をした。
その後、Cの指す方向を答える検査をするのかと思いきや、「少し眩しいですよ」の掛け声の後、目の前で閃光を焚かれた。
突然の不意打ちに「ウォッ...ヒ...」と変な声が漏れ、しばらく目が効かなくなった。
視界が戻ると目の前のディスプレイに、網膜の写真が表示されており、血管や網膜剥離の兆候がないかの検査だったらしい。とりあえずは問題がないそうだ。
再びスコープを覗く様に言われ、「少し風が出ますよ」との掛け声と共にプシュ!と眼球に何かを吹き付けられた。
再び不意を突かれた形となり「ウォッヒ!」と叫び、3センチほど飛び上がった。
「目を閉じたらダメですよ、もう一度やりますね」とのお叱りを受け、3回目のチャレンジでようやく成功した。
眼圧の検査だったらしい。こちらも問題はなかった。
その後、より詳しい検査をとのことで、奥の個室に通された。
目医者を思わせる壮年の男性に家族の中に目の病気をした人はいないか、急激な視力の変化はないかなど、カウンセリングを受け、いよいよメガネの度数を合わせる工程に。
様々なレンズを試しながら、30分ほど検査を続けた。
メガネ屋とはいうが、眼科となんら変わりのない検査の数々だった。
もしここで問題が見つかれば、そのまま病院を紹介してくれるのだとか。
全行程合わせて一時間程度で検査を終え、フレームを選んだ。
丸メガネを所望し試着してみたものの、Holly曰く「シリアルキラーっぽい」との事で断念。
普通の黒縁メガネを選択した。
メガネが出来るまで、二週間ほど掛かるとの事で、ボクシングデーの翌日27日に引き取りを予約した。
完成が待ち遠しい。
極度乾燥(しなさい)
先日のオックスフォードで発見したSuperDry極度乾燥(しなさい)®︎であるが、あれから非常に興味を引かれ、色々と調べた。
まず、これが公式のホームページだ。
一目見ただけで、単にネタに走っているわけではないと分かる商品の数々だ。
Hollyに言わせると、かなりチャブスじみているらしいが。
ここで気になったデザインをいくつか紹介しよう。
英語デザインのTシャツは日本でも馴染み深いが、そこに日本語が加わる事によって強烈な違和感を感じさせる一枚。
絶妙に意味のない日本語が、来日した英語圏の人々の気持ちをリアルに体験させてくれる。
REAL OSAKA 6 会員証な
なぜに会員証なのか。
やはりデザイン性には優れている。
TOKYO Super Dry 自動車潤滑
何を自動翻訳機にかけたのか、とても気になる。
もちろん、メンズだけでなくレディースの商品も取り扱っている。
No.1衣類
これは何となく理解できる。衣類に衣類と記しているのは、何ともハイカラな感じがする。
会員証なにも通ずるが、主張しすぎない日本語が奥ゆかしくて良い。
私の一押しデザイン。北の西による北。
結局北なのか西なのか、北西なのか。
レディースだが、サイズさえ合えばこれを着て街を練り歩きたいものだ。
ここまでいくつか紹介したが、実は日本語があしらわれたデザインの商品はそう数が多くなかった。
以前はよりたくさんの日本語ワンポイトがあったが、事業が拡大するにつれ奇をてらったデザインは減少傾向にある様でとても残念だ。
しかしこの違和感のある日本語はブレードランナーやニンジャスレイヤーに通ずる近未来感を醸し出している様にも感じる。
いずれ日本にも進出していただきたいものだ。
偶然見つけた極度乾燥(しなさい)だが、これについて考える内様々な気づきを得た。
異国の文字に対してデザイン性を感じるのは各国共通だ。
我々日本人がアルファベットや横文字に格好よさ感じる様に、欧米諸国の人間は漢字をアジア風の神秘的な絵に近い物として感じるらしい。
漢字が元々象形文字だった事を考えると、絵の様というのは実に的を得ている。種類の多さも魅力の一つだそうだ。
しかし、単なるデザインとしてあしらわれたはず他国の言語だが、その言語を母国語とする人間の目に触れた瞬間、即座に込められていた意味が解凍され、その下品さ、意味の通じなさ、あるいは稚拙な文法に可笑しみを感じるのだろう。
おそらく、「即座に理解される」という部分が重要だ。
例えば「今すぐに私の尻の穴を犯してください」と英語で書かれたTシャツがあるとする。
私がその英文の意味を理解したとしても、そのデザインに対する評価は意味を理解する前とさほども変わらないだろう。
その言語を母国語としない者からすれば、意味とデザインに関連性はないのだ。
しかし、極度乾燥(しなさい)のTシャツには違和感を覚え、デザインとしては機能は果たされていない様にも思える。デザインよりも意味の方に意識が引っ張られる為だろう。
(デザインとして機能していない事それ自体が、デザインにもなり得る。私は極度乾燥の日本語デザインが好きだ)
極度乾燥(しなさい)のTシャツを着たり、奇天烈な意味の漢字のタトゥーを彫ってしまった外国人を笑うのは、日本人にとっては至極普通の反応かもしれない。
しかし同時に我々は、妙な英語に囲まれ、それをデザインとして良しとする、我々自身を笑っているのではないだろうか。
私が日本にいた頃住んでいた街に「Pearl Necklace」という宝石店があった。「胸に掛かった精液」の意味がある。主婦層向けの洋服屋「Deep 〜reach the climax〜」は「イクまで深く」という意味になる。ホームセンターダイキは一昔前までディック(男性器)という名前であった。
LとR、SとThの区別もつかず、文法も滅茶苦茶なままに歌われる、国内ミュージシャンの英語歌詞。
コンプライアンス、コミット、アライアンスなど、ビジネス英語を羅列し、今後の方針を説く老舗会社の役員。
かくいう私も、この記事の中で何度日本語化された英語を使っている事か。
敗戦後、GHQによって強力にアメリカナイズされた経緯があるとはいえ、果たして文化とはと、考えずにはいられない。
日本国内ではほとんど問題になる事にない、「文化の盗用」についても、いずれ書こうと思う。
オックスフォード、クリスマスマーケット、Super Dry極度乾燥(しなさい)
オックスフォードへ行ってきた。再来週に迫ったクリスマスのプレゼントを買う為だ。
また、イギリスの気温は日本とあまり変わらないとは言え、寒いものは寒く、不足しがちなヒートテックを補充する為にユニクロへ立ち寄る目的もあった。
オックスフォードへは車で一時間ほど走り、少し離れた巨大な駐車場に停め、そこから10分程度バスに乗った。二階の最前列、特等席である。
バスを降りると目の前にはユニクロの看板が。
日本語の看板に、しばしの郷愁を覚える。
店内も、いたって普通のユニクロだ。日本と何も変わらない。
目的のヒートテックを手に入れユニクロを出ると、またもや日本語の看板を見つけたが、こちらはなんとも奇妙であった。
調べると、読んで字のごとく「Super Dry 極度乾燥(しなさい)」というブランドであった。
日本語を取り入れているが、単なる漢字Tシャツとは一線を画した洗練されたデザイン性を持ち、英国を中心ヨーロッパ、アメリカ、東南アジアで人気を集めている。
あのダニエル・ラドクリフの「東京な」Tシャツもこのブランドの製品だ。
極度乾燥の現CEOが日本に来た際、不自然な英語を羅列された服飾のデザインに感銘を受け、それを自国に持ち帰り、不自然な日本語で再現したのだそうな。
非常に残念な事に、時間の都合上立ち寄る事は叶わなかった。
次回はぜひ入店し、妙竹林なTシャツの一枚でも買って帰りたいものである。
さて、こちらが本命のクリスマスマーケットだ。
想像していたよりも小ぢんまりとしていたが、これはかなり小規模なマーケットらしい。
各々の小屋の中ではそれぞれ雑貨が売られており、鉄製の置物や星型の証明、コンパスに万華鏡など、様々だ。
Hollyにはイタズラ好きな叔父がいるのだが、日頃のお返しという事で、この激辛チリソースを購入した。
左から順に辛くなっており、一番右側のソースを選択。その名も「The End」である。
その後はデパートや茶葉屋、文具店などあちらこちらと移動をし、各人へのプレゼントを揃えて行った。
雨のち晴れのち雨のち晴れといったイギリスらしい天気の中、骨の折れる行程ではあったが、さすがは本場のクリスマス、気合の入れ方が違うようだ。